前回の【前編】ではワンビシアーカイブズ社が文書管理という文化を日本に持ち込み、いかに根付かせていったのか、そして取り巻くビジネス環境の変化に対応すべく電子契約という分野に着手した経緯とパートナーとしてGMOインターネットグループのGMOクラウド社と手を取るに至った経緯について、さらにGMOクラウド社の“GMO Agreeファミリー”構想についてまでのお話をお届けした。
続く今回の【後編】では、引き続きワンビシアーカイブズ社とGMOクラウド社の熱い想いと、今後の展望についてお届けしよう。
※前編はこちら
徹底された現場主義と3つのユーザー属性
前回、『Agree』で検討が進んでいたクライアントに『WAN-Sign』を紹介して、『WAN-Sign』に切り替えて検討が進んでいるとのお話を伺いました。
一方で『WAN-Sign』と『Agree』のサービスの違いというものもあると思うのですが、『WAN-Sign』ではなく『Agree』の方がマッチしやすい顧客像というのは、どのようなものになるのでしょうか。
株式会社ワンビシアーカイブズ大川氏(以下、W大川氏):実は三月末のリリース前に、半年間くらいプレセールスをしました。
もともと当社には東名阪・九州に100名程の営業マンがいまして、既存のお客様に対して一社一社訪問して電子契約に関するヒアリングをしました。
電子契約を考えていますか、考えているのであれば、なぜ今導入していないのですかと。
何が課題なのでしょうかと。
ヒアリングの結果、お客様の導入までの考え方として三つのタイプに分けることが出来ました。
一つは、自分たちで電子契約をスムーズに導入できる、自分たちで理解も出来ているので、営業のフォローは不要、WEBで申し込んですぐ使えるから。ベンダーさんにお任せしているからという、ベンダー【お任せ派】という層。
もう一つは、電子契約のシステムだけ入れても導入効果が低いので、捺印の稟議ワークフローとつなげたい、自分たちの受発注システムや購買管理システムとつなげたい等の完全に作り込みたい層の【作り込み派】。
元々この二つに関しては私たちも想定していましたが、実はその真ん中がありまして、作り込む必要はないのですが、電子契約導入が不安、社内の規程・運用をどう変えるべき相談したい、過去とこれからも発生するだろう書面契約との一元管理方法に対する悩みに対して相談をちゃんとしたい、でも大体の電子契約ベンダーさんは営業担当者を広域で多数抱えているところは少ないので、相談と言ってもWEBでとかになっていて安心感に欠けており、社内を通せる自信がないと。
なので、最終的にはカスタマイズせずに電子契約サービスを導入するのですが、ちゃんと営業マンがフォローしてくれて、相談に乗ってくれるということを望んでいる層の【相談派】です。
【お任せ派】、【相談派】、【作り込み派】に分類され、比率は内緒ですが圧倒的に【相談派】が多かったです。
これが今後、私たちがサービスを提供していくべき顧客層だと気付きました。
作り込みをして、広範囲でAPI連携等を希望されるお客様はGMOクラウド社の技術があった方がいいと思っています。
『WAN-Sign』を導入頂いて、私たちが窓口となってGMOクラウド社に開発してもらうより、直接GMOクラウド社とやってもらった方がスピードも早いので、そのような顧客層はGMOクラウド社に連携しようと思っています。
なので、そのような【作り込み派】は『Agree』。
私たち『WAN-Sign』は、多数抱えている営業マンによるフォローが求められ、今までの契約管理ノウハウを活かせる【相談派】をターゲットにしていこうと思います。
WEBからの【お任せ派】に関しては、どちらをご利用いただいてもいいのかなと。
イメージとしては、【お任せ派】は小規模で、【相談派】、【作り込み派】は大きな規模の企業なのですが。
W大川氏:私たちもはじめはそう思っていたのですが、あまり企業規模は関係なかったです。
大きな規模の企業様でも【お任せ派】のところもありますし、小さな規模の企業様でも導入する以上は効果を最大限にしたいからAPI連携等をして効率化を図りたいという【作り込み派】のお客様もいました。
なので、企業規模でどの層に分かれるとかではなく、企業文化とか社内の進め方とか、部署間のパワーバランスとかで決まってくるように思います。
各層での担当になる部門の偏りはありますか。
GMOクラウド株式会社金沢氏(以下、G金沢氏):電子契約を検討いただく際のアプローチには色々あります。
昨今の働き方改革というアプローチはやはり響きやすく、業務改革室や経営企画などのようなところから業務効率化・生産性向上としてアプローチして、電子契約により契約業務を取り巻く環境の最適化を図りましょうというお話をさせていただくことが多いです。
ただ、取引先と契約書の持参・回収・保管管理など行う営業部門・現場や総務管理から声が上がって、法務部門の方がシステム確認のため入るというようなケースも多いです。
実は契約業務に係わる人・部門等は多く、決して生産性がいいとは言えません。
私自身も前職では、銀行系派生から商社系の資本が入った東京本社・大阪本社を構えているITベンダーにいましたが、ご想像の通りハンコ文化でした(笑)。
本社機能が2拠点に別れていれば、押印処理も拠点横断が必須です。
役員・本部長もそれぞれ、右に総務部門、左に法務部門、右に監査部門、左にキャビネット保管などの環境で。
何しろ押印・申請のスタンプラリーが多く、社内便・速達、時には契約書類一式を持参して大阪本社に飛んだこともあります。
電子契約の導入前のご相談をお受けすることも多いのですが、やはり大企業様ですと顧問弁護士の方がいて、ご担当の方の意見でだいぶ変わりますね。
導入してもいいのではないかという弁護士の方と、これはちょっとという弁護士の方と。
電子契約や電子署名の浸透率もあり、意見は変わってきます。
そういった時は、私たちも直接その顧問弁護士の方とお会いして、ご説明するケースがあります。
現状ではまだ、「説明」や「説得」が必要なんですよね。
中には、電子契約や電子取引などIT化に明るい企業様などは、顧問弁護士の方には特に相談することもなく、導入がスムーズに決定する場合もあります。
説得の中でも、難しいケースはどのようなものがありますか。
G金沢氏:電子契約システムは、ITシステムなので、テクノロジーから紐解いていって、かなり細かくご説明します。
現在のお客様は、目に見える紙運用に安心感を持たれています。
何を持って信ぴょう性があって、このようなテクノロジーで証跡が取れるので、というような説明などをしてようやく、そうだねと。
紙より確実・安全であると、ご理解をいただけます。
先方の顧問弁護士の方は法律の専門家であり、私たちはテクノロジー屋さんになります。
先方からすると、ITシステム=ブラックボックスになっていて、何をもって、どれがどうなってということが分かりません。
そこを細かく紐解いて説明すると、これは人が介在するより信頼できると理解してもらい、電子署名(電子証明書)で各々の本人性を厳格に示せてリアルタイムの認定タイムスタンプで改ざん性も担保されているので、そもそも紙運用より安全だということで、推進してもらえるようになります。
そもそも電子契約というものが何なのかということを丁寧に説明していくということですね。
G金沢氏:おっしゃる通りですね。
業務の電子化の流れで最後に取り残されたのが「契約書」になります。
見積書や請求書など、既に電子化・電子取引が浸透されていた一連の業務フローの中で「契約書」だけが唯一残されていた領域になります。
電子化で諦めていた部分でもありご存知ない方が多数を占めております。
少し余談になりますが、私が『Agree』を知ったのは前職でのことでした。
ISVで自社ソフトウェア製品もありましたが、ドキュメントソリューションとしてサードベンダー商材も取り扱っており、そこへ完成して半年位しか経っていない出来たてホヤホヤの『Agree』の売込みが入り、その時に対応したのが私でした。
『Agree』の説明を受けて、これは絶対にくると直感的に思ったのと同時に、もっと早く知りたかったという残念な気持ちがありましたね(笑)。
その場で協業パートナーとして合意して、3週間後にITイベントがあり出展ブースを取ってあるんですけど出展参加しませんか?と、その場で無茶な協業依頼をしてからパートナー側の立場で『Agree』の販売活動を外側から行っていました(笑)。
もちろん、直ぐに社内の管理本部・担当役員などと調整して電子契約導入のプレゼンの場をもちましたが、案の定、導入見送りになりました。
今になって感じていることは当時、電子契約化のみしか見えておらず、現行の書面契約や書類保管に関してはまったく考慮せず提案をしていました。
ワンビシアーカイブズ社であれば、現行の書面業務と電子契約を織り込んだ課題解決の提案ができていたと確信しています。
W大川氏:実際WEBでもサービスの比較・検討というよりも、「電子契約とは」で検索してくる方も多く、市場としてまだまだ導入期というか、理解、認知を広めていく段階と感じます。
GMOクラウド社が「電子契約とは」のところをやってくださっているので、私たちはその後、電子契約導入における課題が顕在化している方々の痒い所をお手伝いしていくイメージです。
文化に寄り添うテクノロジー
G金沢氏:やはり電子契約システムというものはハンコに代わるものなので、国内における契約業務や文化というものの性質上、両者がハンコを押すことが安心感を持つ要素になると思います。
システム化すると何をもってハンコになるのか、という説明は必ず必要になってきますね。
その場合のハンコには2種類あって、認証局から各々に直接発行される電子証明書を使ったタイプと、電子サインを使ったタイプのメール認証があります。
電子契約を検討されているお客様さえ、この違いがフワッとして分かっていないということもまだまだあります。
書面契約と実は大きな違いがありまして、書面契約の際に、実印を用いるというのはかなり重要な契約になります。
これをカバーできるのが認証局から各々に直接発行される電子証明書を使っての契約になります。
もう一方の電子サイン。
これに関しては、会社で言うと角印や担当者レベルの認印・三文判という部分になります。
実は書面契約では大事な部分になります。
相手の本人性がどうなるかという部分で大きな差別化になるのですが、やはりここの違いを理解できていないお客様も多くいらっしゃいます。
この部分を初歩的に紐解いて、電子契約とはこういうものですよという説明をさせていただいています。
担当弁護士の方でこのようなテクノロジーの部分を理解している方はほとんどいらっしゃらないので、まだまだテクノロジーの紐解きは大事だと感じており、我々ベンダー側の努力が必要な部分だと感じております。
そういった電子契約・電子署名(電子証明書)の普及活動の必要性から、IT弁護士である宮内・水町IT法律事務所の宮内先生を招いた共同セミナーなどワンビシアーカイブズ社とも行っています。
W大川氏:私たちがGMOクラウド社と組んだ理由のもう一つが、今話のあった二つのハンコタイプを持っているということでした。
大体の電子契約ベンダー様は、電子証明書か電子メールのどちらかなんですね。
私たちも理解を深めるために電子契約を導入した際には、まずライトな見積書をメール認証で始めました。
見積書がうまくいったら、次は収入印紙のかかる基本契約で印紙代削減しようと。
そうなった時に、電子メールアドレスでいいのだっけ?基本契約書に捺印する時は社長印を押していて、自分の印ではないなと。
こう考えると、ハンコタイプがどちらかしかないと、このレベルの書類はこちらのシステムで、こちらのレベルの書類の時はこちらのシステムで、と使い分けなければいけない。
両方のハンコタイプが無いのも、電子契約が広まらない理由だなと思いました。
その点、『Agree』は書類のレベルや会社・部門の考え方に合わせて、『Agree』の中でハンコタイプを使い分ければいいのです。
厳格に使いたいのであれば電子証明書、ライトに使いたいのであれば電子メールアドレスという。
これって実は、自社に対しても優しくて、かつ相手方に対しても優しいと思います。
電子契約を導入した自社は電子証明書を発行してしっかりとやろうとしているけど、相手方はまだ電子契約に対して「ん?」となっている段階なので、電子メールアドレスでもいいですよと。
片方が電子証明書で押して、片方は電子メールアドレスで押すというのも二つのハンコタイプを持っているからこそ出来るAgreeならではの締結方法であって、これもまた導入のハードルを下げるポイントだと思います。
あとは、N:N型というのですが、『Agree』や『WAN-Sign』を導入している企業様はどことでも締結できるという点も選定の大きなポイントでした。
G金沢氏:現状の電子契約システムというものは、オープンシステム(N+N)ではなくて、クローズドされた専用システム(1+N)になっています。
利用用途により特定の部門や業務専用に作り込んで、この部門と関係ある取引先としか使用できないというクローズドな世界になっているタイプもあります。
私たちはオープンシステムですので、誰とでも電子契約で契約締結が行える発想になります。
メッシュ型のLINEモデルのようなイメージで展開しています。
通常の電子契約の運用は、電子契約システムを導入しているオーナー側から締結依頼を出します。
『Agree』のオーナーと『WAN-Sign』のオーナーであれば、本来そこはどちらの電子契約システムを使うの?という問題になるのですが、『Agree』と『WAN-Sign』を相互接続させれば、『Agree』もしくは『WAN-Sign』を利用しているユーザー間はどちらにも依存せずに電子契約を締結させ文書連携も可能となります。
製品・規格にとらわれずにどちらからでもいいですよ!となるのが、私たちの次のステップになります。
ユーザー1stの先のデファクトスタンダード
行く末はファミリーが増えていって、ユーザーの利便性が高まるというところを目指しているということですね。
G金沢氏:そうです。
これは、電子契約・電子取引の市場の活性化による業務効率・生産性向上を目的とする、大事な社会インフラの構築・確立の一部としてワンビシアーカイブズ社とGMOクラウドは考えております。
W大川氏:それで最終的にはVHSになると(笑)
G金沢氏:業界のデファクトスタンダードになることが私たちの目的ですね。
これらに関してワンビシアーカイブズ社にも強く賛同いただきましたので、共にデファクトスタンダードを目指そうと。
契約書管理と契約管理
先ほどの【相談派】ではどのような相談が多いですか。
W大川氏:『WAN-Sign』のホームページで導入事例としても掲載させていただいているのですが、マネースクエア様や直販部隊で接しているお客様は皆さん【契約管理】に悩んでいらっしゃるのです。
【契約書管理】ではなくて。
大量に締結している契約の管理を正しく行いたくて、その大元が電子か、書面かという制約を受けたくない、意識したくない。
どのような形で締結したとしても、契約を確実に管理したい。
その管理というのは、期日管理、更新管理であったり、必要な契約書がいつでもすぐに検索・閲覧可能な体制を構築したい等々かつ、契約内容を閲覧できる人を限定したい等の統制面も含めて管理したいという相談が多いです。
もともとは契約管理を正しく行って、コストを抑制したいというニーズがあり、それを自社の運用に合わせるとどのように進めていったらいいでしょうかというような相談なのだと理解しています。
従って、『WAN-Sign』や『Agree』をどうカスタマイズしたらいいでしょうかという相談ではないのです。
どういう風にこの器、サービスを使って、正しい契約管理を実現できますかという相談が多いです。
マネースクエア社の場合、WAN-Sign以外も検討されていたのでしょうか。
W大川氏:複数の電子契約サービス、契約管理サービスを客観的に比較されたとお聞きしております。
その時に、シンプルでリーズナブルな電子契約の仕組みを早期に導入することで、正しい契約管理を実現が出来るのはどこかとなった時に、『WAN-Sign』だったと。
当社としても、あまり電子契約を提案している印象はなく、どのような契約管理を実現したいかを提案している印象です。
マネースクエア様の場合は、契約管理の観点から導入していただいており、無理に電子契約に寄せるのではなく、相手方の了承が得られる際には電子契約を利用頂くイメージです。
電子契約を導入したいという企業はまだ多くないかもしれないですが、「契約を正しく管理したい」というのはどの企業も思うところだと思うのです。
そういった時に紙であっても、電子であっても、締結した契約は『WAN-Sign』に集約されて契約管理が出来て、見たくなれば、電子で結んだものも、紙で結んだものもPDFで見ることが出来ますよというのが今回の『WAN-Sign』なのです。
G金沢氏:実は、マネースクエア様は電子契約システムとして『Agree』も比較選定にしっかりと入っており、私もご提案にいっておりました。
ワンビシアーカイブズ社による『WAN-Sign』を中心とした提案に負けてしまいましたね(笑)。
導入されたのが『WAN-Sign』だったので安心しています(笑)。
電子契約のベンダーの立場としては、どうしても電子契約部分に重きを置いてしまいがちです。
いかに署名を押してもらうかしか考えていないところも多くて、押印した後はお客様側にお任せと。
実際、電子契約でまいた契約も、契約管理という業務が必ず発生します。
その点では、『WAN-Sign』は契約管理のプラットフォームとしては非常に濃厚に作ってきたので、電子契約後の契約管理に強いという点は『WAN-Sign』の特徴の一つだと言えると思います。
W大川氏:お客様の声をもとに、本当に沢山の要望を出させて頂きました(笑)。
今でも週に一回、打ち合わせで改善の要望を出しています(笑)。
G金沢氏:本当に『Agree』にも欲しいくらいの気が利く機能をたくさん備えていますから(笑)。
それくらい『WAN-Sign』はきめ細かい部分も多く機能先行している部分があります。
蓄積されたノウハウと磨かれていくノウハウ
W大川氏:私たちはもともと、契約書管理として【作り込み派】のサービスが主だったので、お客様が契約管理するときの項目・機能というものが既存サービスの中にいっぱい溜まっていたのです。
それらを集めて『WAN-Sign』に反映して、この項目・機能があれば恐らく契約管理を正しくできるであろうと。
なるほど。
そもそも契約管理を紙の時代から、ワンビシアーカイブズ社では【作り込み派】として、蓄積してきたノウハウがあって、それをクラウドに反映していこうということですね。
W大川氏:そうです。
私達が仮説として集約した契約管理項目・機能をお客様に検証いただいて、あれが足りないこれが足りないという修正を入れもらって、それをGMOクラウド社に開発してもらったという形です。
既存の営業マンもいるから、そこの精度は日々高くなっているということですね。
G金沢氏:ワンビシアーカイブズ社には今でも色々と勉強させてもらっていますよ(笑)。
お客様と対面で関係を構築し、定期的にご要望をしっかりとお聞きする。それを集計分析して、市場ニーズから機能反映に徹しているため、『Agree』と比較され『WAN-Sign』が選ばれる最大の理由だと思います。
機能の必要性に関して、視点と観点が弊社とまったく違います。
W大川氏:やはり業界のトップ企業に導入してもらって、そこから各業界の裾野に広げていくというのが、日本に電子契約を一番早く広められる方法だと思っています。
トップ企業に行くと、契約管理とか内部統制等に穴があるようなサービスを導入するのはリスクが高すぎるので、効果があるは分かったけどリスクが高いのは壁を感じてしまうじゃないですか。
その方々が私たち作成した『WAN-Sign』のプロトタイプを見ると、私たちでも気付かない穴を見つけて頂いて、ご協力を頂いた方々には本当に感謝しています。
私たちが細かく拾って出した機能追加の要望を全て叶えてくれたGMOクラウド社にも本当に感謝しています。
G金沢氏:実はこの部分は、我々も最初は気付いていなかったポイントなんですね。
弊社も『Agree』が出来上がって3年目になるのですが、まだお客様のナレッジも少なくて、手探りでこうではないかという予測機能から入ったということもあったのですが、その点ワンビシアーカイブズ社はものすごいナレッジとデータを持っていて、さらに市場ニーズなど分析もされているので、予測から確信に変わっていき機能が実装されていっています。
私たちとしても非常に勉強になっているのです(笑)。
なるほど。GMOクラウド社としても管理ノウハウのがたまっていくのですね。
G金沢氏:はい。同じ電子契約サービスですが、『Agree』とは異なるノウハウから『WAN-Sign』はOEM開発されています。
『Agree』は、電子契約になり重きは電子契約による締結(署名)になります。
実は『Agree』もフル電子化のPDF文書の管理は可能ですが、PDFありきによる文書管理が条件となります。
現状では、お客様は契約管理台帳を保有しており、PDF化されていないため『Agree』アンマッチのケースが発生していました。
製品開発のベースの違いからすると、『WAN-Sign』には『Agree』と違った特色あるノウハウが詰め込まれています。
W大川氏:当社はお客様の声を集めることはできても、それを自社でシステムに反映しようとすると、どうしても時間がかかってしまって難しい。
それをGMOクラウド社だと、1~2週間くらいのスピード感で対応してくれます。
市場争いをしている環境において100%のものを3年後にリリースするよりは、まずは基本レベルに達したのであればリリースしようということで進めてきました。
まだまだ足りない部分はあるので、お客様からのご要望を集めて、開発は続けています。
お客様に『WAN-Sign』が良いのは分かるけど、リリース直後だから利用者数は少ないよねと言われることもあります。
相手が『Agree』使っていたらどうなるのと。
そういう場合は、「将来的に繋がるから大丈夫ですよ。すでにGMO Agreeファミリーとしては2,500社以上の導入実績があるので!」とお伝えしています。
そうすると、いつですかと聞かれるので、年内と答えています。
お客様も「年内なら大丈夫か」となります(笑)。
年内ですか?
G金沢氏:『WAN-Sign』と『Agree』の互換接続を年内で計画しております。
W大川氏:GMOクラウド社とは販売体制も提携出来ているので、どのような顧客層が来ても両社がタッグを組めば解決できます。
G金沢氏:当社も自社作り込みでやっておりますので、例えば同じ会社でも契約管理の方法が違うと、部門別に2種類のシステムを提供するようなことになります。
それくらい管理方法が違ったり、契約業務の方法が違ったりします。
そのため、一つのシステムであっても、ニーズに合わせてシステム全体に反映しようとするとどうしても時間がかかってしまうということがあります。
今回は、OEMとして単なる『Agree』のコピーではなく、『WAN-Sign』という別プラットフォームを提供するという位置づけでおりますので、そこにワンビシアーカイブズ社から上がってくる市場ニーズやノウハウを反映していけるということは、すごく良かったなと思います。
GMOクラウドとして、2種類の電子契約・契約管理サービスを提供できるということです。
今後はどのような業種、企業へ導入を推進していきたいと考えていますか。
W大川氏:今回の『WAN-Sign』が出来たことで、私たちのサービスでは今までアプローチ出来なかった顧客層へ、やっとアプローチできるソリューションが出来たなと思っています。
その今までアプローチ出来なかった層というのは、まずは2つあります。
紙を預かるという業務の場合、どうしても「場所」が限定されてしまいます。
私たちの保管できる場所から行ける距離だとか、あとは、紙が邪魔と思うほど土地代が高い地域だとか。
そうなると割合的に首都圏がメインとなってしまい、地方になると提案が難しくなることがあります。
地方の場合、土地はあるし土地代は安いし、当社に預けるとむしろ高くなると言われるのは目に見えていたので、なかなかアプローチしにくかった。
後は、そもそもお預かりする「書類」が無いと話にならないので、書類は特にうちは発生しないよと言われると、これもちょっとアプローチ先としては候補から外れてしまう。
ですが、契約管理したくない、契約管理しない会社というのは、ビジネスをやっていたらほぼ存在しないと思うのです。
電子契約というソリューションであれば、土地という物理的な壁が無くなるので、当社として初めて、全国の企業を相手に出来る商材が生まれたなという感覚です。
まずはこれまで50年間抱え続けてきた物理的な制約と、紙が無いとお話が出来ないという制約を取っ払うことができたので、いったん間口を広げて様々な可能性を探っていきたいと思っています。
とにかく契約管理がワンビシアーカイブズ社の強みだから、地方やどんな企業にいっても手ぶらで帰ることは無くなるということですね。
W大川氏:
そうですね。
さらに、後発ということもあるので、価格競争力も持てたなという印象です。
なので、電子契約締結に重点を置くお客様や契約書PDFの監理サービスをメインにした提案でも十分に競争力はあるので、紙が無くても勝負できるのはワクワクします。
保管管理のサービス部分を考えると、『Agree』よりも割安のように思うのですが、GMOクラウド社としては問題ないですか?
G金沢氏:まったく問題ございません。
私たちがターゲットとしている顧客層の違いや、課題解決のアプローチが異なっています。
『Agree』は、電子契約できる部分を電子契約化しましょう、『WAN-Sign』は、現状の書類管理の最適化から電子契約でさらに最適化というステップになると考えています。
まったく性質も異なり、入り口も違う別ソリューションとして捉えています。
電子契約がいずれ標準化され、利用されることを考えれば、契約管理システムとしての『WAN-Sign』もシェアを広げてもらいたいと思っています。
電子契約機能が搭載されている『WAN-Sign』を利用しているのに、別の電子契約システムを導入し2重運用することはお客様にとっても管理負担が増えてメリットはないと考えております。
先ほど(前編はこちら)でワンビシアーカイブズ社も赤裸々にお話してくれたので、OEMパートナーとしてフェアではないので話しますと、弊社内でも契約管理システムとしてアプローチが強い『WAN-Sign』に対して脅威であるという声も一部でありました。
いずれ電子契約が標準化される時代を見据えている電子契約メーカー側のGMOクラウドとして、いずれ繋がる電子契約サービス『WAN-Sign』が、契約管理システムとして広く企業で利用されていくことに、個人的には何も疑問を感じませんでした。
中長期的な戦略で考えると、『Agree』ベースの電子契約機能を搭載した契約管理システムとして利用されている『WAN-Sign』の電子契約機能がONになり、市場で『Agree』とも繋がることになる、電子契約市場を広げる一つの戦略としても必要だと思います。
W大川氏:もし明確なターゲット層として、あえて絞るとすると、一気に電子契約を普及させるためにホールディングスへの導入を目指したいと思っています。
金沢さんと一緒にプレゼンに行くと、電子契約のテクニカルな質問が来れば金沢さんがすべて答えてくれますし、導入後の契約管理などについて聞かれれば私の方ですべて答えていけるので、ほとんどの場合でご納得いただけます。
確かに、オールドエコノミーとGMOの合わせ技でプレゼンに行けば、どの角度から質問が来ても強いですね。
W大川氏:そうなんです。
どの方針で希望されても対応できるのです。
完全に作り込んでAPI連携することも出来るし、完全なパッケージ商品をちゃんとコンサルタントを付けて導入まで支援してほしいという希望が来ても大丈夫です。
G金沢氏:私たちは基盤(IaaS)も自前でありますし、ITサービスで足りない部分はワンビシアーカイブズ社がカバーできるというところがタッグの強みだと思います。
弊社は、世界で数社ほどしかない最高位のルート認証局であるGMOグローバルサインが連結会社にいます。
そして、世界各国で認証業務を展開しています。
国内では最高位のルート認証局はGMOグローバルサイン含めて2社しかおらず、SSLサーバー証明書では、国内含めグローバル各地域でもシェアNo1を獲得しておりシェアを拡大させています。
電子契約の要である電子証明書のシェアとしても、実はかなりのトップシャアを誇っていたりします。
様々な企業で運用されている、他社電子契約システムなどで利用されている電子証明書やタイムスタンプは、実はGMOグローバルサインのルート証明書だったりします。
GMOグローバルサインは、国内の電子認証局として初の欧州連合(EU)加盟国に適用される法的規則「eIDAS」に準拠した電子証明書の発行準備を進めており、さらにGMOグローバルサインのインド法人であるGMO GlobalSign Certification Services Private Limitedで『Agree』の販売を開始するなど、国内に限らず既にグローバルでも展開できる基盤が整っています。
電子契約の要である認証基盤の共通部分も、ファミリー構想の一つとして考えています。
こういった大本の基盤がGMOクラウドグループにあることにより、『WAN-Sign』と『Agree』がシームレスに繋がる意味で、電子契約市場では大きな第一歩になると思っています。
先ほどVHSになるというお話もありましたが、今後、ベータのようなところも出てくると思うのですが、そことも繋ぎ込むということもあるのでしょうか。
G金沢氏:旧来含めて存在している電子契約システムが、GMO Agreeファミリーに接続されることはGMOクラウドとしてウェルカムです(笑)。
W大川氏:私たちも結果的にウェルカムです(笑)。
使う側からするとそうならないと、なかなか利便性は上がらないですよね。
W大川氏:そうなんです。
もしその覇権争いに敗れたサービスを導入していた場合に、また一からやり直さなければいけないという状況は避けたいので、ファミリーを増やすというスタンスは私たちとしても非常にありがたいなと。
G金沢氏:新しいサービスが出来ると、似たようなサービスが乱立する傾向があるんですよね。
私たちとしてはお客様の課題解決や利便性を第一に考えていますので、乱立したものをまとめるという方法もあるかもしれませんが、今回は“つなげていく”というスタンスで考えています。
そして自然とまとまるようなビジョンで描いています。
半世紀以上に渡り紙の書類を扱ってきたワンビシアーカイブズ社。
インターネットITの業界を常にけん引してきたGMOクラウド社。
一見、両極にいるこの2社が手を取り合い一つのサービスを作り上げる。
これもいわゆる、時代の流れというものなのかもしれない。
今回のインタビューで印象的だったのが、とにかくお二方とも楽しそうに話していたことだ。
ワクワクが止まらないという感じがとてもよく伝わってきた。
正直ビジネス的な期待もあるのだろう。だが、純粋にお客様の役に立てる、世の中を良くしていける、今までにない新しいものを生み出していく、というワクワクが溢れていた。
GMO Agreeファミリーの第一弾となる『WAN-Sign』。
『Agree』、『WAN-Sign』それぞれがどのように各方面に普及していき、どのようにファミリーを増やしていくのか。
今後もその動向を注視していきたい。
取材協力:
株式会社ワンビシアーカイブズ
営業開発部マーケティンググループ
グループ長
大川 洋史 様
GMOクラウド株式会社
ソリューション事業部
電子契約サービス推進室
ストラテジック・アライアンス担当
金沢 由樹 様
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【GMOクラウド株式会社】
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1996年のサービス開始以来、ホスティング事業者として13万を超える法人サーバ運用実績と国内およそ6,500社の販売代理店を有する。2011年2月にクラウドソリューション「GMOクラウド」を立ち上げクラウドサービス事業に本格的に参入して以降、クラウド事業に主軸を置いて国内のみならず世界へ向けてサービスを展開し、グローバル企業を含む多くの企業に最適なITインフラを提供。
また、連結会社のGMOグローバルサイン株式会社が中心となり展開する「GlobalSign」の電子認証サービスは、SSLサーバ証明書の国内シェアが4年連続でNo.1(※4)を獲得し、欧米やアジア地域、中東地域など世界10ヵ国・複数地域の拠点を通じて政府レベルのセキュリティをグローバルに展開。
さらに、2017年からはAI/IoT事業にも注力しており、自動車向けIoTソリューションの開発や、画像解析AIを使ったサービスを提供。
(※4)Netcraft社の「SSL Survey」より(2019年3月時点)
【GMOクラウド株式会社】 (URL:https://ir.gmocloud.com/)
会社名 | GMOクラウド株式会社 (東証第一部 証券コード:3788) |
所在地 | 東京都渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー |
代表者 | 代表取締役社長 青山 満 |
事業内容 | ■クラウド・ホスティング事業 ■セキュリティ事業 ■ソリューション事業 ■IoT事業 |
資本金 | 9億1,690万円 |
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【株式会社ワンビシアーカイブズ】
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ワンビシアーカイブズは、1966年の設立以来、一貫して『企業の情報資産の安全確保と管理の効率化』を追求し、堅固なセキュリティ体制のもと、重要な情報資産の発生段階から活用、保管、抹消までのライフサイクル全てをカバーした総合的サービスを提供。
現在では東京・大阪・名古屋・九州に営業拠点を置き、官公庁や金融機関をはじめとした約4,000社が利用。2017年には書類とデジタルの両方をカバーする新しい書類保管サービス「書庫探」をリリース。
【株式会社ワンビシアーカイブズ】 (URL:https://www.wanbishi.co.jp)
会社名 | 株式会社ワンビシアーカイブズ |
所在地 | 東京都港区虎ノ門4丁目1番28号 虎ノ門タワーズオフィス |
代表者 | 代表取締役社長 佐久間 文彦 |
事業内容 | ■情報資産管理事業 ■保険代理店事業 |
資本金 | 40億円(日本通運株式会社100%子会社) |