「電子契約を導入する」、もしくは「電子契約の導入を検討している」という企業が増えている。 リモートワークや在宅勤務、テレワークが求められる環境下に置いて、電子契約サービスの注目度も高まっている。 そもそも電子契約にすることのメリットは何なのだろう。 そして、電子契約によるデメリットやリスクはあるのだろうか。
Contents
電子契約のメリット
まずは、電子契約のメリットは何なのかをまとめてみようと思う。
電子契約の導入によるメリット その1【印紙税削減】
電子契約の導入によるメリット その2【事務経費削減】
電子契約の導入によるメリット その3【事務作業の効率化】
電子契約の導入によるメリット その4【コンプライアンス強化】参照:株式会社デジタルストレージ | 電子契約導入のポイント
1.コスト削減
2.業務効率と契約スピードのアップ
3.コンプライアンス(法令順守)強化
4.他業種との取引に対応できる参照:株式会社ワンビシアーカイブズ | 電子契約とは?4つのメリットを解説
1.コスト削減
2. 契約処理の迅速化
3. 検索性の強化参照:GMOグローバルサイン | 電子契約の法的有効性とメリット
(1)コスト削減 : 印紙代、郵送代、封筒代、インク代、人件費、保管費用が削減できる。
(2)業務効率化 : 文書を紙面に印刷するなどの手間や保管先から検索する手間が削減できる。
(3)コンプライアンス強化 : 原本の紛失や劣化、改ざん等のリスクが低減できる。参照:クラウドサイン | 電子契約の導入メリット
各社が提案している電子契約導入のメリットをまとめると下記の3点に絞ることができそうだ。
- コストカット
- 業務の効率化
- コンプライアンス強化
《電子契約のメリット1》 コストカット
一言で「コストカット」と言っても、多方面での経費削減を意味している。
まず、紙の契約を電子契約に変えるので、紙の契約を締結していた時のほとんどのコストを抑えることが出来る。
紙の契約を締結するときに必要な経費を考えてみよう。
- 紙代:契約書をプリントアウトする用紙代
- インク代:印字にはインク代がかかる
- 製本テープ代:通常は2部製本
- 印紙代:取引内容によっては印紙がそれぞれに必要
- 切手代:2部製本して先方に送る、送り返してもらう返信封筒にも切手代がかかる
- 人件費:製本から締結完了までに人の手がかかる分、それは人件費がかかってしまう
- 保管料:社内の鍵付きキャビネットなど保管場所の確保が必要
電子契約にすると、このうち「人件費」と「保管料」意外は“ 0 ”にすることが出来る。
「人件費」と「保管料」に関しても“ ほぼ0 ”とまではいかないまでも、大幅に削減することはできるだろう。
電子契約を使うことで業務フローが簡素化できるため、契約締結までのやりとりの時間を大幅に短縮できるために、そこに係る「人件費」は比例して削減できる。
「保管料」もクラウド上にデータを保有することになるので、オフィス内にスペースを確保する必要はなくなる。つまり書類保管の家賃は必要ない。ただ、利用するサービスにもよるが月数百円程度のデータ保管料はかかるものと理解しておいた方が良いだろう。
どちらにせよ、物理的、人的、時間的なコストの削減は大いに期待できるのだ。
《電子契約のメリット2》 業務の効率化
電子契約にした場合の業務効率化を考えるにあたり、まず、紙の契約書を締結する場合の工程を考えてみようと思う。
STEP1 製本作業:2部印刷 → ホチキス止め → 製本テープ
STEP2 捺印申請など社内稟議を回す
STEP3 捺印完了の書類を取引先へ郵送
STEP4 先方に届いたか電話やメールで確認
STEP5 先方での捺印を待つ・・・
STEP6 先方から捺印済みの契約書が送られてくる
STEP7 管理台帳などに記載して、鍵付きのキャビネットにしまう
これだけでも7工程あることが分かる。
このうち、電子契約にすることでSTEP1 STEP3 STEP4 STEP6 STEP7は無くすことが出来る。
製本や郵送などが必要なくなることは、前述の通りだが、STEP4の先方に届いたかの確認の連絡が必要なくなるというのは、電子契約のシステム上、ほとんどのサービスにおいて、管理画面上で先方で現状どのようなステータスにあるのかが可視化できている。
ファイルを閲覧している、閲覧して承認しているなどのステータスが分かるようになっているものもあるため、わざわざ確認の連絡を入れる必要はない。催促したい場合は別かもしれないが。
サービスによっては、稟議のフローを組み込むこともできるため、STEP2の捺印の稟議も軽減することも出来る。
今後も各社のサービス内容向上を見越すと、さらにこれらの工程は削減していけるものが増え、業務効率化のメリットは増々大きくなっていくものと思われる。
《電子契約のメリット3》 コンプライアンス強化
そもそも電子契約というのは、電子署名とタイムスタンプによって契約内容の改ざんリスクを最小化することが出来る。
今の時代、実印の印影から3Dプリンタで模倣品を作成する子が出来てしまう。
3Dプリンタで作られた印鑑の印影を肉眼で見破ることは難しいが、電子署名であれば、そのデータに改ざんがあったかどうかを誰でも確認することができる。
紙での契約書の場合、複数の担当者が同時に様々な案件を進めている場合、「誰が」「どの契約書を」「いつ」「どこに」しまったのか、などはいちいち記録も把握も出来ないのが実情だろう。
保管したキャビネットなども常に鍵をかけていたり、「誰が」「いつ」「どこに」持ち出したかなどの管理も正直難しい。
いわゆる管理漏れや、情報漏洩というリスクが起こり易い状況が常にあるのだ。
書類を電子化してデータベースをクラウド上に保管すれば、高いセキュリティを実現でき、改ざんや紛失のリスクを軽減でき、万が一データが紛失しても、復元することができる。
また、前述のように契約の進捗確認も行いやすくなり、今まで見えていなかったリスクを可視化することで、コンプライアンス強化を図ることが出来る。
データでの管理をすることで、検索性が紙による管理のときよりも格段に上がり、税務調査、会計監査などにも迅速かつ正確に対応できる点も大きなメリットの一つだろう。
電子契約のデメリット
電子契約導入のメリットを調べると、いくつかにまとめることはできるものの、たくさんの記事が出てくる。
それでは、デメリットを上げるとするとどのようなものが考えられるのだろうか。
ここを予め鮮明にし、どのような対応策があるかを明確に出来れば電子契約導入のハードルはぐんと下がるのではないだろうか。
単刀直入に、電子契約を導入するデメリットは次のようなものがあります。
取引先の理解を得ることが難しい
一部契約は書面での締結が義務付けられている
業務フローが変更することへの社内説明
以上が、電子契約を導入する上でのデメリット、ひいてはハードルとなります。
中央集権型だとサイバー攻撃が不安
紙の契約書に盗難や破壊、改ざんのリスクがあるように電子文書に対しても管理サーバーへのサイバー攻撃が懸念されます。多くの電子契約サービスは1箇所で全てのデータを保管する中央集権型をとっているためそこを突破されると文書を守れません。電子契約できない書類もある
一部の書類は電子契約が認められていません。こちらの書類は手間がかかっても紙媒体で契約してください。
・定期借地契約
・定期建物賃貸借契約
・特定商品取引法で書面交付義務が定められているもの
・労働条件通知書(※法改正があり、2019年4月より電子交付が可能に)受け入れない企業もある
新しいものが浸透するには時間がかかるし、企業内部での動きも変わります。そのため便利なシステムでも受け入れたくない企業が存在することは念頭に置きましょう。電子契約に対する不安を取引先が持った時はしっかりと説明するのが肝心です。
一部締結できない契約書がある
宅建契約における重要事項の説明書類をはじめ、法律上、契約の相手方に契約書を書面で交付することが義務付けられているものや電子化を認める根拠がないケースには電子化ができないケースがあります。ただし、国でも今の時代を踏まえ、契約のスムーズ化やペーパレス化による環境貢献、IOT技術の促進によるグローバルな競争力をつけることを目的に、続々と電子化を認める環境を作っています。そのため、今はNGでも将来的には電子化が認められるケースも増えるかもしれません。また、一部に電子化できない契約があっても、業務で扱う多くの契約が電子化可能なら導入する規模の利益はあるでしょう。意思表示の撤回ができない
郵便で出せば到着前に取り戻すといったことができたのに、e-mail時代になって送信したらもはや撤回ができないので、メール送信は慎重にというビジネスの鉄則が誕生しましたが、これは契約の電子化においても当てはまります。一度、署名してしまうと撤回ができないので慎重な契約が必要になります。ただし、あらかじめ撤回できる条件や期間、方法などを定めた覚書を追加、契約内容に撤回条項などを設けることで回避できるのではないでしょうか。バックデート不可
本当は11月1日から契約を執行させたかったのに、時間が取れず、契約の締結が11月10日になってしまったという場合、書面の時代なら契約日を11月1日にして契約も可能でした。ですが、タイムスタンプの発行により、こうした柔軟な対応はできなくなります もっとも、契約書に契約期間を11月1日からと記載しておけば、契約日が11月10日になってしまっても意図に基づく契約が可能となります。導入時に社内外の理解を得る必要がある
自社でメリットを感じて導入に踏み切っても、顧客や取引先などが応じてくれないと運用ができません。定期的に契約が発生する取引先をはじめ、契約の取り扱いを行う自社のスタッフの理解も得る必要があります。こうしたコンセンサスを得るプロセスが面倒と断念する会社もありますが、スムーズに理解を得るための方法を以下のパラグラフでご紹介します。
➀心理的な抵抗感・説明の手間
日本には「契約は契約書に印鑑を押して成立する」という観念が強く残っているため、契約電子化への移行に心理的な抵抗感があるということもありえます。電子契約に移行するためにはまず経営陣に対する説得が必要です。会社としては、いざ訴訟になった際、契約書を証拠として用いることができるかどうかに最大の関心があることかと思います。この点につき、電子署名法3条には「…本人による電子署名…がおこなわれているときは、真正に成立したものと推定する」という規定があります。電子契約書にも証拠能力があることを説明すると、納得が得やすくなるかもしれません。
契約は相手方があってのことなので、相手方の了承も得る必要があります。この点についても、契約時に相手方の法務担当者に確認しておくと良いでしょう。➁導入までの手間
契約を電子化する場合、押印に代わるものとして電子証明書を取得する必要があります。電子証明書を取得するためには認証局に問い合わせ、所定のソフトを使って必要事項を記入するという手間が発生します。
電子契約導入のデメリットを調べてみると、いくつか出てくるもののメリットに比べるとやはり少ない。
まだデメリットを書き綴るほどの時間が十分に経っていない、ということももちろんあるだろう。そして、まだ不具合や不都合が出るほどに使い込んでいる企業も少ないということもあるだろう。
ただ“ 現段階において ”という前置きは必要になるが、下記のようにまとめることが出来るのではないだろうか。
- 社内外への説明、導入準備が手間
- 電子契約できない契約書もある
- サイバー攻撃の可能性は否めない
《電子契約のデメリット1》 社内外への説明、導入準備が手間
社内においても、社外においても、電子契約を導入するということは少なからず今までの契約フローに変更が起きる。
結果的にほぼ変わらず導入できるとしても、導入前というのは懸念が先に来てしまって、どうしても抵抗感が出てしまうもの。
そのような感情を持った相手に対して説明、説得するというのは中々体力のいる作業になる。
今は各ベンダーも導入後のフォローとして、社内や社外への説明会開催を積極的に行っているようなので、導入に際しては相談してみるのもいいだろう。
《電子契約のデメリット2》 電子契約できない契約書もある
現法令上は下記文書は紙での契約書が必要とされている。
- 定期借地契約(借地借家法22条)
- 定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)
- 投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)
- 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務(特定商品取引法4条etc)
労働条件通知書の交付(労働基準法施行規則5条3項)
※法改正により2019年4月から電子交付可能に。
上記は法律上、紙面での交付が義務付けられている。
逆を言うと、これ以外は紙面交付の義務はないということになる。
労働条件の通知書に関しては、今年(2019年)の4月から書面の交付義務はなくなる。
時代の移り変わりによって、法律も変わるだ。
つまり、定期借地契約、定期建物賃貸借契約、投資信託の約款、特商法で義務付けられているものは現在は書面の交付が義務付けられているが、今後はこれらも電子契約で処理できる時代が来るかもしれない。
それも遠くない未来に。
《電子契約のデメリット3》 サイバー攻撃の可能性は否めない
紙での契約書の場合でも盗難や破損・改ざんなどのリスクがあるように、電子契約の場合も管理サーバーへのサイバー攻撃が無いとは言い切れない。
もちろんそのような脅威に対しての対策は各社している。
中には1箇所で全てのデータを保管する中央集権型のリスクを軽減するためにブロックチェーンを用いているところもある。
リスクの可能性で言うと、紙も電子書面も同様に思ってしまうが、どちらにせよいずれの契約書に関しても専門家が日々、そのセキュリティの研究をしてそれらのリスクや脅威から守ってくれているのは間違いないだろう。
そのような意味では、導入に際して、どのセキュリティに委ねるかという点も選考基準になるのかもしれない。
電子契約のメリットとデメリットまとめ
電子契約導入のメリットとデメリットに関しては、各社認識は同様のようだ。
出来る限り要点をまとめ簡潔にしてきたつもりだが、さらに簡潔にそれぞれを一文でまとめてみようと思う。
時間や経費を大幅にカット出来て、コンプライアンスの強化も図れる。
導入のための社内的、社外的な面倒な調整が必ず必要で、それなりに大変だが、電子契約できない書類も実は少しだけある。
かなりザックリだが、要約するとこのような形になるではないだろうか。
あくまで現時点での、という前置きは必要だろう。
今後は法令も変わり、電子契約で処理できる業務の幅も広がっていくことは容易に想像できる。そして、今提供されている電子契約サービスもバージョンアップを繰り返していくことだろう。
だからといって、その時までじっと待つのではなく、いま導入するならどこに相談すべきかを考えるべきではないだろうか。
在宅勤務やリモートワークが強く求められる今こそ、電子契約サービスの導入を検討していただきたい。
ここPaperless Gateでの情報が、そのための一助になれば幸いである。