法務省が取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認についてクラウドを使った電子署名を認める。
取締役会の議事録に関する取締役と監査役の承認について、クラウド型の電子署名を法務省が容認する考えを、経団連など主な経済団体に伝えたと日本経済新聞が報じた。
これまで会社法が容認するかを明示する規定はなかったが、新型コロナウイルスの感染防止策の一環で、署名や押印に関わる手続きを簡素にしたい経済界の要望を反映し、明確な方針を定めたという。
手元で保管するICカードやUSBを使った電子署名はすでに認めていたが、「リモート型」や「クラウド型」と呼ばれる方式での電子署名を認めるのは今回が初めて。
取締役会の議事録確認であれば「取締役会に出席した取締役らが議事録の内容を確認し、意思表示するものであれば事足りる」としてクラウド型などの署名の利用を認めたという。
内閣府の規制改革推進室は株式会社の定款作成時の署名や指名委員会の議事録の承認などでの活用も求める見通しだとも報じている。
今回の容認によって、取締役や監査役を複数兼任する人の制約が減り議事録承認も早くなるが、当事者がネット上の書類を確認し、認証サービス事業者が代わりに電子署名するのも可能となる。
法務省は5月12日の規制改革推進会議の成長戦略ワーキング・グループにおいて、昨今普及している電子契約サービスのいわゆる「立会人型のクラウド署名」に関して、電子署名法第3条の推定功は及ばないという考えを示した。
「電子契約事業者が利用者の指示を受けて自ら電子署名を行うサービス」について、現行法下での規律を説明すると、上述の通り、電子署名法第三条の推定効が働くためには、電磁的記録の作成者本人による電子署名が必要である。当該サービスは、契約当事者ではなく、電子契約サービス提供事業者が、当該事業者自身の秘密鍵を用いて電磁的記録に電子署名を行うものであることから、当該電磁的記録の作成者を当該契約当事者とする場合には、同条の「本人による電子署名」には当たらず、推定効は働き得ないと認識している。
一方で、もし「立会人型のクラウド署名」による契約成立までのやり取りなどから、その契約の成立を証明できるだろうという考えも示していてる。
他方で、契約当事者(利用者)間で電磁的記録(契約書)の成否に争いが生じた場合においては、電子契約事業者に対する利用者の指示の内容や、当該指示に基づき電子契約事業者において当該電磁的記録に電子署名が行われた状況等の個別の事情を立証することによって、当該電磁的記録が真正に成立したものであることを証明し得ると認識している。
この時の成長戦略ワーキング・グループでは、日本組織内弁護士協会(JILA)や帝国データバンク、『クラウドサイン』の弁護士ドットコムも電子署名法の改正や規制緩和について意見を出した。
「民間事業者間の契約において活用が進んでいる一部の電子契約事業者が利用者の指示を受けて自ら電子署名を行うサービスについても、電子署名法第三条による電磁的記録の真正な成立の推定を得られるよう、必要な措置を検討すべきではないか。」
という意見に対しての回答が、上記だ。
そして、今回の取締役会の議事録承認を法務省が容認するという報道。
電子契約、電子署名を活用できるための環境が、着々と進んでいるといえるのではないだろうか。