突撃インタビュー

【E-STAMP】徹底したユーザー視点から見えてくる電子契約の最前線

クラウドサイン、GMO Agree、NINJA SIGN、BtoBプラットフォーム、CONTRACT HUB、WAN-Sign、paperlogc、クラウドコントラクトなど、「電子契約」というワードを検索するだけでも、各ベンダーの名前が連なり、各社それぞれに自社サービスをアピールするページが出てくる。さらには、一括資料請求サイトでも各社名前を連ねている。
そんな中に同じように名を連ねる、複数サービスを展開している会社名がある。
「株式会社E-STAMP(イースタンプ)」である。
提供しているサービスは、弁護士ドットコム社が展開する『cloud sign(クラウドサイン)』とGMOクラウド社が展開する『GMO Agree』のサポートを付加したパッケージソリューションだという。
パッケージソリューションとはいえ、今現在、電子契約サービスにおいて、複数サービスを提供する企業は、他にはないだろう。
(PaperlessGate調べ。取材日2020年1月)
「電子契約」界隈においてユニークな展開をしている株式会社E-STAMP。
PaperlessGateとしては、これは話を聞かないわけにはいかないということで、さっそく突撃してみた。

出発点はユーザーニーズ

本日は宜しくお願い致します。今年2020年にサービスを統合したと聞きました。

株式会社E-STAMP代表取締役髙岡氏(以下、E-STAMP髙岡氏)本日は宜しくお願い致します。
2020年1月1日付で、株式会社アクセルから『クラウドスタンプ』というサービスを事業継承しました。もともと、株式会社E-STAMPは『イースタンプ』という電子契約サービスを提供してきました。
そこに、今回の『クラウドスタンプ』を加え、電子契約のソリューションを専門に扱う会社として改めてスタートした形になります。

では現状、お取り扱いとしては、2商材という事でしょうか。

E-STAMP髙岡氏そうですね。
弁護士ドットコム株式会社の『クラウドサイン』と、GMOクラウド株式会社の『GMO Agree』というサービスを、それぞれ『クラウドスタンプ』、『イースタンプ』として提供させていただいております。

『クラウドスタンプ』と『イースタンプ』のお取り扱いという事ですが、社名としては今後も「E-STAMP」のままなのでしょうか。
また、今後は取り扱い商材を増やしていくのでしょうか。

E-STAMP髙岡氏社名に関しては、正直色々な意見が出ているところですが、当面はこのままの予定で、今後は必要に応じて検討していくことになると思います。
取り扱い商材に関しましては、取扱い商材数を基準には考えていません。
あくまで第一にお客様のニーズがあって、そのニーズに対応できる電子契約のサービスを提供できる会社でありたいと思っています。
電子契約というソリューションを、世に広めていくために、中立的な立場で、販売とサポートをしていきたいと思っています。

なるほど。今お取り扱いの2商材は各社のブランドを独自ブランドとして提供していますが、自前の電子契約サービスを作る予定はあるのでしょうか。

E-STAMP髙岡氏電子契約のサービスそのものは、GMOクラウド社の『GMO Agree』と弁護士ドットコム社の『クラウドサイン』を提供しているのですが、そこに当社独自のアクティブサポートを付与して、オリジナルブランドの『イースタンプ』『クラウドスタンプ』としてご提供させていただいています。
そして基本的には、当社の中で電子契約のプロダクトを作るという事は考えておりません。
色んな会社様のプロダクトに、当社のサポートを付加することで価値を高めご提供するという方針は変わらないです。

複数の電子契約サービスを取り扱うことから見えたもの

 

そうなんですね。電子契約の複数商材を取り扱うのは、それぞれの特徴があって大変ではないのでしょうか。

E-STAMP髙岡氏正直大変です(笑) お客様の人数に応じて、管理機能などの必要な機能があったりしますので、その辺はお客様に応じて我々の方からご提案させていただいております。

どのようなお客様にどのようなサービスが良いかの判断軸も難しいと思うのですが。

E-STAMP髙岡氏そうですね。そのあたりに関しては、当社ならではのノウハウが蓄積できているので、最適解をご提示できると自負しております。
やはりこのサービスというのは、お客様の重要な書類を電子化していくサービスになりますので、色々な業種にまたがって専門のサポートチームを組んでおり、それによって、業種や企業規模などに応じてどのような機能が必要かなどは、どこよりもノウハウがたまっていると思っています。

昨年だけでも、電子契約の新サービスは多く出たと思いますが。

E-STAMP髙岡氏当社でも、どのような会社様がどのようなサービスをリリースしたかというのはもちろん把握しています。
その中で一部の会社様とは話をさせていただくこともあります。
ただ、先ほども申し上げた通り、当社としては、取り扱い商材を増やすことを目的としていません。
当社としてお取り扱いさせていただけるかどうかという点において、一つ一つ慎重に検討しながら判断させていただいております。
現状の弁護士ドットコム様の『クラウドサイン』も、GMOクラウド様の『GMO Agree』の導入実績も非常に多いので、新しいサービスの取り扱いを増やしていくということよりは、既存サービスのヴァージョンアップに応じて、我々なりのアクティブサポートも充実させてサービス提供させていただくという方針です。


建設業界への導入が好調と伺いました。

E-STAMP髙岡氏そうですね。
建築業法という範囲の中で、印紙が発生し、署名が必要な分ではありますので、比較的、コスト削減できるという明確な結果が受け入れられやすい業種の一つだとは思います。
建設業に限らず、コスト削減につながるような業種などは、既存のお客様の動向や業界の動向を見ながら、導入を進めていきたいと思っています。

今までの商談で印象的だったものはありますか。

E-STAMP髙岡氏ある建設業者さんのケースなのですが、請負う案件が学校法人とか市役所とかで、公園の側溝を作るとかガードを付けるとか、病院の待合室のリフォームなどの業者様がいらっしゃいます。
その業者さんが電子契約を導入しようと思い、案件の発注元である法人や行政に対して電子契約での契約取り交わしを打診しても、対応してくれないんです。
先ほど、メリットの一つに印紙代を削減できるというお話をしましたが、数万円の印紙代では動機付けにならないんですね。
マンションの一棟とか、工業用の太陽光などのような数億円単位の大きな案件であれば、印紙代も数十万円とかになるので、変わってくるようにも思いますが。
そもそも、やはり「電子契約」というサービスやワードの認知度がまだまだ低いと感じています。
導入企業は増えてきていますが、実際に積極的に活用している企業様というのはまだまだ少ないと感じています。
その理由の一つが、やはり自社で導入をしても周りの企業で電子契約の利用が無いという事だと思います。
あとは、根深いハンコ文化や、紙の信任性の方がまだ上回っているということもあるように感じます。

 

草の根活動から見えてきた課題

   

そのような、電子契約が浸透しきらないという雰囲気に対する対策は何か考えていらっしゃいますか。

E-STAMP髙岡氏一つの策として、中小企業様向けのプランを作って提供開始するところです。
今後、受信する中小企業が増える中、各社の電子契約を保管する機能をメインとしたサービスを説明し、裾野の拡大につながるような活動をやっております。

建設業としては具体的にはどのような企業が多いですか?

E-STAMP髙岡氏ハウスメーカーや、工務店、リフォーム業者様などです。
興味を持っていただいても、費用対効果や、取引先様のご理解を得るという部分が導入のハードルになることが多いです。
電子契約というものは、自社で導入したとしても、取引先の企業様が電子契約に応じていただけないと、「電子契約」が成立しないので、取引先様へのご説明が必要になるケースが多いと思います。

貴社のサービスの中で、相手企業への説明会開催などもありますね。

E-STAMP髙岡氏そうです。アクティブサポートのオプションプランですが、取引先の企業様に対して説明会を開催したり、取引先様用のマニュアルを作成してご提供しています。
また、導入した企業様に代わって、取引先企業様からの問い合わせ窓口を用意し、電話サポートすることもあります。

中小企業向けのプランというのはどのようなプランでしょうか。

E-STAMP髙岡氏このプランの対象となる会社というのは、自社の方から契約書のドラフトを送るという事がほとんどないと想定しています。
上流からきた電子契約の電子承認をするということが非常に多く、自社の方から送信するということが少ないと思っています。
取引先様からきた電子契約の承認をして、「電子帳簿保存法に則って保存をする」という部分にニーズがあると思うので、そこに特化したサービスになります。
最近は特に、大手、中堅規模の会社様で電子契約システムの導入が進んでいます。そのような企業と取引している中小の企業にとっては、上流から色々な電子契約サービスで電子契約が届くことになります。
この新サービスを導入することで、様々なベンダーの電子契約サービスで届いた電子契約を、受け手が安全に保管できるようになります。

電子帳簿保存法というところがキモなのですね。

E-STAMP髙岡氏やはり法令順守という立場では必要なキーワードですね。


 

既存サービスをユーザーに合わるというサービス

 

イメージ的には、上流はイースタンプやクラウドスタンプ、電子契約を受ける側のようなところはこのサービスがフィットするという事ですね。
具体的に、企業規模としてはどのような規模がフィットしますか。

E-STAMP髙岡氏業種によるとは思いますが、数名から数十名くらいではないでしょうか。
大手や中堅の企業で電子契約サービスの導入が進んでいるというマーケットデータもありますし、我々としても中堅以上の企業で導入に踏み切っていらっしゃるという実感も沸いています。
なので、そこと取引のある中小企業様も電子契約の環境を整える必要があるだろうとおもっていました。
ただ、通常の電子契約サービスのプランだと費用対効果が見いだせないという課題がありました。
そこで、比較的導入しやすい価格帯で、かつ、取引先である上流のお客様が導入しているどのサービスにも対応できるサービスを作りました。

なるほど。今回のサービス以前に、貴社独自のサービスとしてアクティブサポートというものがありますが、これに加えて別のサービスはお考えですか?

E-STAMP髙岡氏具体的な新たなものというのはまだないですが、今お使いいただいているお客様や、現在提案しているお客様からのニーズに合うサービスを提供していきたいと常に考えています。
従って、我々次第というよりは、お客様の声やニーズに応じて随時リリースしていきたいと思っています。

『クラウドサイン』や『GMO Agree』などの電子契約に限らず、その周辺のサービスも総合的に取り扱っていく可能性もありますか?

E-STAMP髙岡氏そうですね。現段階として、ワークフローをやろうとか、勤怠をやろうなどというような計画はないですが、お客様のニーズがあれば、対応していくべきかなと思っています。
ただ、まだまだ電子契約というサービス自体が、市場としてはこれから立ち上がっていくサービスだと思いますので、そういう意味では、当面は電子契約という分野に集中して事業展開していこうと考えています。
我々もこの電子契約の事業は2年前からやっていますが、2年やっていて色々分かってきたこともあります。
当初、「契約書」という概念で走っていたのですが、実は「申込書」にもニーズがあったりとか、従業員の方との「誓約書」であったり、「条件通知文」などのような、“契約書以外”のところでのニーズがありました。もう少し時間はかかると思いますが、そう遠くない将来、日本の商文化に根強いハンコ文化と紙の契約というところから、一気に変換する時が来るのかなと思っています。
また、デジタル法案の通過など、行政や政府の施策も入ってきていますので、全体的には追い風かなというのは実感しています。

     

「サポート」を無類のサービスへ

 

ではそこに向けて着々と準備は進めているという事ですね。
ベンダー以外でサポートに特化したサービス展開というのは、貴社だけだと思うのですが。

E-STAMP髙岡氏そうですね。ただ、サポートの仕方と言っても色々あると思います。
毎月サポート費用をいただくケースだったり、初期費用でいただいたり。
カタチはあるにせよ、サポートを重視しながらサービスを提供しているベンダーさんも増えてきたかなという感じはあります。

その中でいかに差を出していくかは、やはり難しいですか。

E-STAMP髙岡氏やはり難しいですね。
どこで差が出るかというと、今ご利用いただいているお客様での実績ですかね。
今ご利用いただいている導入事例というのを、同じ業態業種のお客様にご紹介しながら。
初めは一枚しか電子化しなかった書面を、2枚目、3枚目、4枚目、5枚目と、どんどん電子化していくことが我々の使命だと思っています。 その実績こそが、サポートの差であり、当社のサポートの強みだと思っています。

電子契約を使うシーンとしては、やはりBtoBの場合が多いと思うのですが。

E-STAMP髙岡氏どちらかというとBtoCの方が先行しているように思います。
建設業界で考えると、消費者の方の申込書を電子契約で取る、注文住宅やリフォームの工事請負契約書などですね。
BtoBですと、取引先の相手企業が「電子契約ではできない」と言ったら、もうできないんです(笑)。
それに比べ、BtoCの場合は、そのハードルがぐんと下がります。
注文住宅の場合、消費者が印紙代を払わなければいけません。1万とか2万とか。
それが無くなるのは、消費者にとっても明確なメリットです。
それがBtoBの場合、印紙代2万円の負担が無くなるとなっても、なかなか動機付けにはなりにくく、相手方の理解が得にくいのです。
当社のお客様で、人材派遣業のお客様も多くいらっしゃるのですが、やはりBtoCの雇用契約で利用されています。
情報通信業も、我々の感覚では代理店契約書での利用が多いのですが、BtoBやBtoCでの申込書でも多く利用されており、当初想定していた、代理店契約書や業務委託契約書以外での利用シーンが増えています。
受けることが多い場合は、先ほど申し上げた新サービスの方が合いやすいと思います。
相手側から来るものに備えられますので。
そのサービスがあれば、『クラウドサイン』から契約書が来ても、『GMO Agree』から来ても、『Holmes』から来ても、『ドキュサイン』から来ても一元管理できます。


 

来るべき時に備えて

 

電子契約サービスというよりはストレージがメインという事ですね。

E-STAMP髙岡氏そうですね。
例えば、注文住宅のハウスメーカーさん場合、その下請け業者さんというのは多数いるのですが、その下請け業者さんというのは、一社だけから請けるという事はあまりありません。
Aハウスメーカーから請ける、Bハウスメーカーから請けるなど複数から請けていることもあります。
そうようなときに、例えばそれぞれのハウスメーカーが電子契約を導入していて、その電子契約サービスがバラバラだったとします。
そうなると、請負う方も電子契約することで、当然印紙も無くなってメリットは大きいので、電子契約するのですが、それぞれ違うシステムでの管理になってしまっていました。
それぞれの契約データを一元管理するためには、こういったサービスが必要になってくるのです。

これまではこのようなサービスは無かったのですか?

E-STAMP髙岡氏厳密にいうとありました。
近いサービスとしては、『GMO Agree』の保管プランというのがあって、電子帳簿保存法に対応しています。現在は他社のサービスも、電子帳簿保存法に対応した保管のオプションプランをリリースしています。

なるほど。これを導入した場合、電子契約を自社側から出す場合は、別途電子契約サービスを利用することになるのですか?

E-STAMP髙岡氏月額料金内で10通までは出すことができます。
元々は、ハウスメーカーの下請け業者向けのパッケージとして作ったのですが、建築業に限らずニーズがあるのではないかという事で、他の業種にもご提供できる形を整えました。
電子契約を出すことも出来るのですが、どちらかというと電子契約としてではなく、保管サービスとして提供していきます。
なので、10通の電子契約はおまけです。
さらに、これを導入することで、今の紙の契約書もPDFデータにして、一緒に管理することが出来ます。
我々も電子契約サービスとして2商材取り扱いがあり、これは本当にいいサービスだと思っていますので多くの方に使っていただきたいと思っています。
ですが、現状の電子契約サービスというものが、価格的にも、スペック的にも、すべての企業にマッチするものではないことも分かってきています。それも電子契約が浸透していくうえでの弊害になっているのではないかという事で、今回のようなサービスを提供することになりました。
中小企業にとっては、今後ますます中堅、大手企業が電子契約サービスを導入していって、下請けや取引先として電子契約を受け入れなければいけない状況が必ず来ると思っています。
そう遠くない将来にきっとそうなると思います。
そうなった時に環境の変化に対応していけるか、むしろ先に対応しておけば良かったというような状況が起こるような気がしています。


 

夜明け前

 

今後、電子契約を取り巻く状況はどのようになっていくと思いますか?

E-STAMP髙岡氏電子契約の認知は上がってきていて、導入も進みだしてはいるものの、まだまだ普及の余地はあると思っています。
普及が進んでいない理由としては、根深い印鑑文化と、根深い紙での契約書というところだと思います。あとは、法的に大丈夫なのかなというところ。
行政が後押ししている感はありますが、まだ企業間での契約書というところからは少し遠いかなと思います。
ただ、変わって来ているとは思います。間違いなく。


   

最後に力強く発した言葉がとても印象的だった。
電子契約というものを日本の商取引に根付かせる。
その先導役は自分たちである。
そう宣言しているようにも思えた。
その覚悟でやってきており、様々な壁にぶつかりながらも乗り越えてきた自負があるからだろう。
電子契約サービスを提供する各ベンダーも、それぞれに電子契約サービスの普及に努めている。そして、自社サービスのサポートサービスなども備え始めている。
自社サービスに対するサポートなので、もちろん安心感もある。
その中で電子契約のサービスに、徹底的にユーザー目線で考え抜かれた独自のサポートサービスを付加するE-STAMP。
複数サービスの比較から見出せる独自の視点を持てることも、各ベンダーがそれぞれに提供するサポートサービスとは違う部分ではないだろうか。
新たに提供していくサービスの動向も気になるが、『クラウドスタンプ』『イースタンプ』に続く第三のパッケージソリューションサービスは生まれるのか、今後もE-STAMPの動向に注目していきたい。


   

取材協力:
株式会社E-STAMP
代表取締役
髙岡 義一 様

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