電子契約サービスにどのようなものがあるのかということを調べ始めていると、最初に出てくるサービスのうちの一つに、「CONTRACTHUB」というサービスがある。
サービス名称は「CONTRACTHUB@absonne」(こんとらくとはぶあっとあぶそんぬ)と言うらしい。
そしてこのCONTRACTHUBを提供しているのが日鉄ソリューションズ株式会社だ。
「日鉄」、、、タイムリー過ぎる。
電子契約という先進的なサービスを調べていて「新日鉄住金」や「日鉄」という歴史ある重厚なキーワードが出てきて思わず二度見してしまった。
日鉄ソリューションズ株式会社と言えば、親会社は日本製鉄株式会社。言わずと知れた製鉄業界の巨人で、2019年4月に「日本製鉄」の社名が復活し、話題になったばかりだ。
そんな製鉄業界の巨人を親会社に持つ日鉄ソリューションズが、電子契約サービスを提供しているという。それだけ電子契約サービスというもののニーズが高いということなのだろうか。
対応していただいたのは、日鉄ソリューションズ株式会社CONTRACTHUB営業推進グループの後藤氏。 率直に疑問をぶつけてみた。
大企業への導入が多いイメージなのですが、やはりそのような大企業をターゲットに導入を進めているのでしょうか。
日鉄ソリューションズ株式会社 後藤氏(日鉄ソリューションズ後藤氏):結論から言うと結果的にそうなったというだけです。
もともと弊社はシステム開発のインテグレーターとして、各業界の大きな規模のお客様との取引が中心です。
また、お客様や仕入れ先、パートナー企業様などとの間で、様々な取引がありますが、今でも書面でのやり取りが多く残っています。
その中で我々としては、どうやったらこの電子契約というものを広めていけるだろうかと考えた時に、やはり各業界の1位、2位くらいの企業様が導入していかないと、他の企業様も本気で取り組んでくれないのではないかということもあり、マーケティング的、営業的観点から、とにかくそういった企業様に何とか導入してもらおうとやってきた結果が今こうなっているだけであって、大企業にしか導入しないとかそういうことではないのです。
導入の際は全社的にというよりは一部門からということが多いのでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:そうですね。最初から全社的にというよりは一部門からのスモールスタートになるケースは多いです。
それも、どこか特定の部門からということは無く、強い発信力をもって旗を振る人がいる部署が最初に導入する場合が多いです。
弊社のお客様の場合は、そういう役割を担っているのが経営企画部だったりとか、購買や調達の部門の部長の方やリーダーの方だったりすることが多いですね。
現場から、今どき紙でやっている場合じゃないだろうという熱い想いを持っている方が旗を振って導入するという場合が多いようです。
例えば我々のお客様で、女性のマネージャーの方が中心になって導入された企業もあります。
お子様が生まれて時短勤務になり、残業はできない、そういった状況下で部下の指導をされたり、大量の書類のやり取りもあって、このままではなかなか厳しい、効率化を図らねばということで、働き方改革ということが騒がれる前でしたけれど、何とか自分の仕事として変えなきゃいけないということで取り組んでいただきました。
当然一人ではなくて、上長や社内の方を巻き込んで、調整されてやっていただきました。
業務効率も上がり、コスト削減にもつながって、大変ご満足いただけています。
電子化のきっかけは業務効率の改善と発注漏れの防止
電子契約システムの開発のきっかけは自社内での業務改善のためにと伺いました。
日鉄ソリューションズ後藤氏:そうなんです。
7年前くらいからやりはじめました。
今では社内でも普通のことになっていますが、当時は「本当に大丈夫なの?取引先が受け入れてくれないんじゃないの?」と心配する人も大勢いました(笑)
そもそもそこに至ったきっかけは何だったのでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:2つあります。
一つは業務負荷です。
それぞれの事業部ごとにシステム開発のパートナー企業様がいて、合わせるとグループ全体で数百社規模になります。
各企業様との発注、納品、請書などのやり取りが膨大な量になってしまって、事務担当が月末になると残業しなければいけないということがよくありました。
もう一つが、コンプライアンス強化です。
発注先が下請法の対象になるパートナー企業様もいらっしゃるので、そちらの発注などが漏れてしまうと、非常に大変なことになります。
ただ、発注書などを紙でやっていると危険が多く、もっとクイックに、きっちりやる方法はないものかということで調べていったときに、電子契約が良さそうだとなりました。
しかも印紙税効果もあるぞとなったわけです。
そうなるとやらない理由が無くなってきたのです。
そして、毎年社内で開催しているビジネスコンテストがあるのですが、その第一回に総務部門のメンバーが中心になったチームが電子契約のアイデアで応募したところ、それが賞を獲りまして、それならやってみようとなりました。
ただ、いざやろうとすると、今度は色々課題も出てきて、実際は簡単にはいかなかったです。(笑)
そうやって出てくる壁を一つ一つクリアしてきて“今”があります。
ですが、結果としては、大成功でしたね。
自社事例としても、グループ企業含めると印紙税だけで毎年相当なコスト削減効果があります。
印紙だけでもこれだけありますし、手間の削減や業務効率化なども考えたらメリットは相当大きいのは間違いないと思います。
今、弊社のパートナー企業への発注の9割以上は電子契約です。
親会社からの契約も電子契約が進んでいます。とはいえ、社内ではまだ紙の部分も相当残っています。
相手あっての電子契約。導入前も、導入後も。
他の企業様でも、いきなり全社的にというよりは、まずは一部の部門からの導入が現実的なのではないでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:使い方は色々です。
皆さん抱えている問題は様々で、コスト削減だけでなく、働き方改革の話もあれば、グループ間のコンプラアンス強化であったり、お客様の満足度向上であったり。
例えば、大手コンビニエンスストア企業では、店舗工事や改装などの建設部門で導入いただいています。
建設請負工事では工事業者と設計事務所などの三社間契約になって、署名押印のリレーがあったり、紙が多くなってなかなか進まないということもあり、そういった部分を電子化するととてもクイックに、スムーズに進めることが出来ているようです。
モーゲージバンクや銀行などの金融機関では個人のお客様や融資先企業との金銭消費貸借契約書の締結などにも導入が広がっています。
電子契約って、一社だけではできないんです。
必ず相手がいてのものなので、導入、運用していくには、それを巻き込めるかどうかというところが重要かなと思っています。
独りよがりでは始まらないサービスなのです。
我々もサービスを提供して、それで終わりだとは思っていません。
どんな風に取引先に説明したらいいのか、どんな風に社内調整したらいいのかなどを一緒に考えてご提案しています。導入後がさらに重要だと思っています。
実は弊社のCONTRACTHUBは基本的には“開発レス”で提供しています。
管理者ツールの設定で様々な契約タイプや文書に対応でき、開発は基本的に無いので、システムの導入に関してはそれほど負荷はないんです。
でも、導入後、社内のこれまでの紙による業務が変わりましたとなったときに、何を注意したらいいのか、どう説明したらいいのか、実際に使っていく中で不安があって社内や取引先から質問されたときにどう答えていったらいいかというところを超えないと、スモールスタートも切れません。
そういったところをお客様と一緒に進めてきました。
立ち上げ時にしっかり寄り添う
日鉄ソリューションズ後藤氏:立ち上げ時のサポートが大事だと思っています。
導入に際しての社内調整、導入直後の社内・社外の調整。
我々としてはそこにしっかり寄り添いたいと思っています。
今は自社の経験も活かせるので直接導入支援をすることが多いですが、今後は各業界に強いパートナーとの連携も進め、サポートのさらなる充実化を考えています。
また、5年前のリリース時から、安心して導入いただけるように税理士や弁護士の先生などバックアップしていただく専門家のチームを作りまして、Team e-Con(チーム・イーコン)という名称で一緒にやってきました。
電子契約は、みんなが使うことでさらに便利になるはずです。
現在は、サービスオーナー企業の中で、想いのある方が旗を上げてやってらっしゃるんですがけど、やはり取引先の説得など、今でも立ち上げ時にかなりそこに力を割かれています。
5年前に比べれば社会での認知度も上がって、だいぶご苦労は減っておられるかと思いますが、そう遠くない将来、電子の方が普通でしょとなって、そのようなご苦労もほとんど無くなるのではないかと期待していますし、そうなるようにお手伝いしていきたいと思っています。
他社製品との違いはどのようなところでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:我々は色々な事をやっているSIerなので、電子契約もかなりお客様毎に個別開発しているだろうなと思われているかもしれませんが、実はそうではなくて、ワンサービスでほとんどお客様にはカスタマイズ無しで提供しています。
基本的に“開発レス”なんです。
管理者ツールの設定により、あらゆる種類の契約とその関連文書が電子契約化出来ます。
契約書だけでなく、見積、注文、納品、検収、請求まで一連の取引文書をすべてここでやり取りしていただけます。
ピンポイントの契約ツールというよりは、取引情報と取引全体のペーパーレス化を狙ったサービスで、SaaSとして提供しています。
そうなると、やはり、それなりの柔軟性というか、色んなことがやりたいというご要望をいただくことになります。
幅広いご要望に鍛えていただいているので、機能的には、手前味噌ですが他にはあまりないのではないかなと思うくらい許容範囲は広いと思います。
逆に、出来ることが多すぎて難しそうと言われることもあるのですが、十分にご利用いただけるように、もちろんその辺は手厚く支援させていただいています。
料金的にはどのような設定になっていますか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:スモールスタートでは基本月額50,000円のライトパックというもので導入していただくことができます。
あとはプラス料金でシステム連携ができる通常版もあり、3~4割の企業様は通常版でご利用いただいています。
SaaS機能で他社に先行しているイメージですね。
日鉄ソリューションズ後藤氏:そうですね。
金融機関でもSaaSで導入いただいています。
御社にとって競合とはどこになりますか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:業界によって分かれると思います。
特に不動産、建設、金融、流通などからの引き合いが多いのですが、各業界でそれぞれ競合の相手は変わってきます。
そういう意味で言うと、最も業界を跨いでサービス提供しているということが言えるのかもしれません。
われわれの外販の最初のお客様は大手百貨店企業で、店舗改装工事の部分で導入いただきました。
最初は建設関係のお客様の導入が多かったです。印紙税メリットが大きかったのでそうなたんだと思います。
でも我々は、印紙税はあくまで導入メリットの一部だと思っていたので、ペーパーレスやコンプライアンス強化を推進している業界であれば、どこでも受け入れてもらえるはずだということで活動していったら、多数の業界を跨ぐようになりました。
今現在、導入企業としてはどれくらいでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:サービスオーナー企業としては160社ほどですが、その先の取引先としては5万社以上の企業がブラウザを通じてCONTRACTHUBにアクセスしているのではないかと思います。
今後、グローバル展開の予定はありますか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:社内の事例としては既にやっています。ただ、お客様への提供としては、これからの状況です。
英語メニューなどはすでに提供しているのですが、各国の法令などもあるので、お客様とご相談しながら、今後は実績を増やしていきたいと思っています。
CONTRACTHUBのストロングポイントはどこでしょうか。
日鉄ソリューションズ後藤氏:商品の機能や製品力というところももちろん自信を持って提供していますが、一番のストロングポイントとしたら、経験値、導入実績かもしれません。
事業規模の大小にかかわらず、様々な企業から直接お問い合わせいただくことがさらに増えてきました。
我々が培ってきた経験や事例があるので、是非遠慮なくご相談いただければと思います。
今各社がご不安に思われていることも、我々は既に事例として持っているかもしれません。
これまで導入いただいたお客様でも、最初はいろんな困難や不安があったかと思いますがが、一緒に乗り越えてきました。そしてそれは“超えられない山ではない“ということが多かったのです。
さらにその山を越えた時のメリット、これが非常に大きい。
電子契約導入で迷っていることがあればぜひぶつけてほしいです。
一緒に“山”を超えるお手伝いをさせいただければと思っています。
認知が進み導入を検討する企業が増えてきているとはいえ、まだ数%ではないかと後藤氏。
ここ最近は問合せの数もかなり増えていて、電子契約というものの注目度が上がっていることは肌で感じているという。
誰でも最初はもちろん不安なものだ。
今までに無いものならなおさらだ。
自分たちが身をもって切り拓いてきたから、それが分かるのだろう。
だから、その先にある大きなメリットも知っている。
だからこそ、“硬い”意志を持つ鉄のDNAで「山を越えよう」と手を差し伸べられるのではないだろうか。
取材協力:
日鉄ソリューションズ株式会社
ITインフラソリューション事業本部
営業本部 デジタルプラットフォーム営業部
CONTRACTHUB営業推進グループリーダー
後藤 哲矢 様