結論から言うと、現状としては今まで通り法人登記の際に印鑑登録は必要である。
会社登記の印鑑義務化をなくすため、商業登記法は2019年中の改正を目標にしていた。
2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」には、行政サービスの100%デジタル化にむけた「デジタルファースト法(仮称)」などの整備が盛り込まれている。このデジタル化戦略の中には、法人の登記に際して印鑑の義務化をなくすため、商業登記法改正を2019年中に行い、2020年までに任意化する目標が明記されていた。
参照:
『印鑑なしで法人登記』法案提出を見送りへ。自民党議員「印鑑業界の意見がすべてではないが…」
ハフポスト日本版では、「2019年中の国会審議を目標にしていた会社登記の「印鑑レス化」が、6月26日まで開かれている通常国会に提出されない見通しであることが分かった。」とも報じている。
元々は2019年中の国会審議を目指していたが、6月までの通常国会には間に合わないという。
これまでも昨年の春や夏にも印鑑業界との意見交換を行ったとしているが、実際どのような意見を交換しあうのか気になるところだ。
また、ハフポスト日本版では科学技術担当大臣の平井卓也氏に対しても取材しており
「デジタル化は、印鑑をなくすことが目的ではない。まず認証方法などをしっかり決めて審議することで、デジタル上の認証制度を整えていくことが先だ」と語った。
と報じている。
確かに印鑑を無くすための法案となると、目的も手段もよく分からないものになってしまう。
デジタル認証の制度についての法整備は、電子署名法や電子帳簿法など着々と整ってきていると言っていいだろう。
電子契約サービスが増えているのも、それら法整備が整っていることが背景としてあげることができる。
政府としても、認証方法含め各方面でのデジタル化を進めていきたい意向であることに相違はないだろう。
これは、印鑑業界や製紙業界などに代表されるように、これまで様々な産業が支えてきた“当たり前”が変わろうとしていることを意味する。
当然そのような時は反発も起きやすいため、各方面での調整や整備、推進が必要となる。
世界的にみても印鑑文化が根付いている日本において印鑑がデジタルに変わる日はそう遠くはないのかもしれない。
そのためには、その意義や、そうならなければいけない背景を業界人だけではなく一般的に理解を広めていくことも必要だろう。
ふと思うところだが、もし印鑑が現在の『認証』という役目を終えることがあった場合、刀剣や甲冑のように芸術というセカンドキャリアを築くことはできるのかもしれない。