電子契約法とは
2001年(平成13年)12月に施行された、正式名称を「電子消費者契約及び電子承諾通知に関す る民法の特例に関する法律」という、「電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済」と「電子商取引などにおける契約の成立時期の転換」を定めた法律。
電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済
BtoC(事業者と消費者間)の電子契約において、消費者が申込みを行う前に、消費者の申込み内容などを確認する措置を事業者側が講じていない場合、要素の錯誤にあたる操作ミスによる消費者の申込みの意思表示は無効となります。 これまでは、事業者から、操作ミスが「重大な過失」にあたるので契約は有効に成立している、と主張することが可能でした。 申込完了ボタンなどの前に、規約等の同意のチェックボックスがあったり、申込内容の確認ページを設けないとその申込み自体が無効になってしまうということが定められたというわけです。 操作ミスによる意図しない申込みは、民法では、第95条に規定する「要素の錯誤」に該当します。要素の錯誤に該当する意思表示は原則無効となるとされています。 しかし、その錯誤が重大な過失による場合まで意思表示をした者を保護する必要はありませんので、民法はそのような場合は、相手方から、その意思表示は有効であると主張することができるものとしています。民法第九十五条(錯誤)
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
電子商取引などにおける契約の成立時期の転換
これまでは、承諾の通知が発信された時に契約は成立するとされていましたが、電子契約法では、承諾の通知が申込者に到達した時に成立することになりました。 契約成立のタイミングが、申込者側、特に消費者側に少し優しい内容になったと言えるでしょう。 民法では、隔地者間の契約(※1)については、承諾の通知が発信された時点を契約の成立時点とするルール(発信主義)が採られています(※2)。このルールによれば、一度承諾の通知が発信されてしまえば、仮に承諾の通知が途中で紛失するなどしてその通知が申込みをした人に到達しなくても、契約は成立したことになります。 このルールは、民法が立法された当時、隔地者間においては承諾の通知が相手方に到達するまでにある程度の時間がかかるという技術的な制約を前提にした上で制定されたもので、承諾の通知が発信されれば、その時点で契約が成立することとし、迅速な取引の成立を図ることとしたものであると言われています。この結果、承諾の通知が到着しない場合などのリスクは、申込みをする側が負担することになっています。 ※1:申込みに対する応答が直ちになされる対話者間の契約以外の契約 ※2:意思表示一般の場合は、相手方に通知が到達したときに効力が生じる(到達主義)ものとされています。 到達主義への転換
インターネットなどの電子的な方法を用いて承諾の通知を発する場合には、瞬時に相手方に意思表示が到達するため、発信主義を維持する前提を欠くものと考えられます。 そこで電子契約法においては、そのような場合については、契約成立時期を、承諾の通知が到達した時点へと変更することになりました。
民法第五百二十七条(申込みの撤回の通知の延着)
申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。 2 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。
電子契約法のまとめ
BtoCのインターネット上での取引きにおいて、消費者側のうっかりミスで申し込んでしまった契約などを無効にできるようにし、契約が成立する場合においても、事業者側が発信したタイミングから消費者側に到達した時に変わった。